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デジタル化で写真家が得られたもの、失くしたもの

デジタル化で生活が便利になってきている反面、デジタル化で起こるパラダイムシフトにより様々な業界が衰退している。
その不景気の波に様々な業界が飲み込まれていてるが、顕著なところで音楽業界、出版業界の関係者は多くいるだろう。

写真家もその煽りを受けている業界関係の一つでもある。

そんなプロカメラマンの一人に石田研二氏がいる。
何年か前に知りあい、歳の差はあるが飲み友達の間柄でもある石田研二氏に色々とお話を伺ってきた。

石田研二

押し入れを暗室にしていた少年時代

石田氏は1949年、京都で生まれ育ち、中学の頃に家にあった父親のオリンパスのペンというハーフサイズのカメラを使い出し、のめり込むあまり押し入れを暗室代わりに使っていた。

本格的に写真をやり出したのは高校に入ってからだったが、石田氏が興味を持ったのは写真を撮るということよりも暗室で印画紙に写真を焼くことに大変興味があったという。
しかし、写真を焼くにはやはり材料となる写真が必要ということから、次第に写真も撮り出すようになった。

大学は大阪芸術大学へ進んだが当時は写真学科はなく、デザイン学科の写真コースを専攻した。
だが専らアルバイトに励み、大学でと言うよりも現場で写真に関する様々な事を経験で学び、さらには当時のバブル絶頂期の甘い汁も飲んだ。

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紫綬褒章を受賞の野町和嘉氏に師事

大学を卒業してしばらくして東京に上京した石田氏は、グラフィックデザイナーの兄の伝手で写真家の杵島隆氏を紹介してもらうが、「写真が撮れるので、独立したら?」と勧められる。

しかし、経験もないことから杵島隆氏から同じく写真家の野町和嘉氏を紹介してもらい、師事を仰ぐことになる。
写真家、野町和嘉氏はサハラ砂漠などの乾燥地帯をテーマに取材を長年続け、その功績により様々な賞を獲得、2009年には紫綬褒章を授与する著名な写真家である。

野町和嘉氏は、海外取材をすることが多く留守がちだったが、その間、石田研二氏は野町和嘉氏の事務所で様々な仕事をこなすうちに事務所の稼ぎ頭になった。
バブルの後半においては、写真の撮影のみで月に一人で百万円を稼ぐこともあったと言う。

宮武東洋氏のスタジオに足を運んだことも

英語はできなかったが、2ヶ月ほどロサンゼルス、ニューヨーク、ボストンとアメリカをバスで周遊したこともある。

1909年にアメリカに移住した著名な写真家に宮武東洋氏がいる。
宮武東洋氏は、太平洋戦争中にアメリカの収容所にカメラを隠し持って入所し、塀の中の様子を撮ったことで知られる。

その宮武東洋氏の孫が日本に来日した時にボーイスカウトを通じて知り合ったことがキッカケで、その渡米中は宮武東洋氏の息子のアーチー宮武氏の家に居候した。

実際に宮武東洋氏のスタジオに足を運んだこともあったが、宮武東洋氏がどういう人物かを後になって分かったそうで、今では思い出深い出来事であるという。

写真について聞いてみた

数十年とプロカメラマンとして活躍してきた石田氏だが、バブルの崩壊、デジタルカメラの急激な普及によりカメラマンとしての仕事は減ったという。

現在、石田氏は10年ほど前から日本写真芸術専門学校・東洋美術学校で学生に教える傍ら、個展・グループ展を開きつつ、日本写真家協会でフォトボランティアジャパンの運営委員として活躍している。

そんな石田氏に写真についていくつか質問を投げかけてみた。

■デジタルカメラが登場した時はどう思ったか

< 石田氏>
ISO感度の切り替えやホワイトバランス調整が素人でも簡単に変えられるようになり、いざ自分も使ってみるとその便利さに驚き感動した。

当初はまだ大丈夫だろうと危機感を感じることはなかったが、デジタル化の波は思った以上に浸透する速度は早く、仕事がなくなるという危機感は次第に感じとるようになった。

デジタル化の波といえばパソコンを覚えなくちゃいけないと感じ、50歳頃のから使い出した。
(2012年で石田氏は63歳を迎えている)

■写真の魅力とは

< 石田氏>
瞬間を撮れるという意味では写真はボタンを押すだけで簡単に撮影できるのに、表現が非常に味わい深く濃いものができる。

しかし、人を感動させるのは難しい。

それは、狩猟や狩りと一緒で、必死に探して一瞬を得た時の喜びはなんとも言いがたいものがある。
そこに写真の魅力を強く感じる。

■日本の写真の環境について

< 石田氏>
一人の写真家としてより多くの人に作品を見てもらうことで認めてもらい、それをアート作品として買い上げてくれる事を望むが、日本にはその雰囲気や風習はほとんどなく、どちらかと言うと無料でもらうイメージが強い。

海外ではフォトグラファーが撮った写真はアートとして捉えている感がある。

■最近の写真に白黒が多いのは?

< 石田氏>
今は光と影をテーマとして追いかけていて、色があることによって綺麗な写真として見せることは簡単ではあるが、白黒であれば見る人に創造性を働かせ、コントラストは見る人により深い印象を与えることができると考えている。
(ページの最後にいくつかの写真をお借りして掲載している)

■写真を取る時に大事な事は

< 石田氏>
何事も基本が大事である。

現在、教えている学生で、自分が何を撮ればいいのか分からないという学生が多いが、そんな時はより多くの写真を撮ることで、自分がどんなものを撮ったら楽しいのかが見えてくると伝えている。

テーマ、コンセプトはもちろん大事であるが、写真は撮ることだ、とにかく撮ることが大事だ

話を聞き終えて

デジタル化は生活の面において様々な「便利」な要素を生み出したが、その反面、カメラマンの仕事を衰退させる要因ともなっている。

また、石田氏はメールが普及したことにより顔を見ないで仕事をするのは楽かもしれないが、少し寂しいとも言っていた。

デジタル化によって得られる「便利」、一方でプロカメラマンとして失う「仕事」。
これはもう後戻りができない時代の流れであり、この時代をどう生きていくかが課題であるが、時代に合わせて自分たちも変化をさせる必要があるだろう。

氏が言うような「寂しさ」を感じ取ることのないような変化をしたいものだ。

最後に何点かの作品をお借りしたので掲載しておこう。
道具は便利になったが、それでもやはりプロが持つクオリティを出すには、それなりの修練が必要なのは間違いないだろう。
風車のある風景 ©石田研二

灯台 ©石田研二

隅田川 ©石田研二

空からの都市風景 ©石田研二

新宿御苑より ©石田研二

遠くに見えるスカイツリー ©石田研二

東京タワー ©石田研二

古き良き時代と現代 ©石田研二

飛行船 ©石田研二

大きな公園の下で ©石田研二

バスケットゴール ©石田研二

カテゴリ:写真