時折、新宿の飲み屋街のバーに行くとインバウンドによる海外の観光客があちこちで見かける機会が増えた今日このごろだが、バーカウンターの隣に座った海外の観光客相手に簡単な片言の英語を使って会話することがある。
お酒のおかげもあるのだろうが、それなりに楽しくワイワイしてインスタのアカウントを交換することもある。
簡単な会話ならともかく、少し難しい言い回しなんかはスマホの翻訳機能に頼ってしまう。
そんな筆者は韓国やベトナムの方と接する機会もあり、会話は当然ながら日本語が基本だが、どうしても伝わらないこともある。
スマホを使うのもいいのだが、もっと手軽に使えるものがないのかと思っていたが、ポケトークという翻訳機があるのを知って購入してみた。
そんなわけで、翻訳機ポケトーク S2のレビューをしてみたいと思う。
目次
翻訳機ポケトーク S2のレビュー

専用の翻訳機がもたらす心理的抵抗の低減
スマホという便利なものがあるのに、なぜわざわざ翻訳機のポケトークを買ったのか?
「このアプリを使うと便利だよ」と言ってもなかなか使ってくれない、よく分からないという事で手を出さない人の中には年配の方がちらほらいる。
スマホはかなり便利な道具ではあるが、それでも様々なアプリの中から探す、起動する、設定するなど、場合によってはシンプルでも操作に対する心理的不安がストレスになることもある。
また、スマホはプライベートデバイスというのもあり、個人所有端末を他者に提示する行為に内在する心理的抵抗があるなとなんとなしに筆者は感じることがある。
上記の理由から、それなら、いっそのことそれ専用の操作しかしないツールで、プライベートではなくパブリックなツールとして提示しても心理的抵抗が少ないものを買った方がいいのではないか?と考え、購入に至った。
スマホ | ポケトーク | |
---|---|---|
操作性 | 多機能ゆえに、未知なものを操作するストレスや操作が煩雑になる場合も | シンプルで簡単、即時性、専用のツール |
心理的影響 | プライベートデバイス | パブリックなツール |
音声自動認識による翻訳が操作負担を軽減
ポケトークが提供しているデバイスはいくつかあるのだが、筆者が選んだのはポケトーク S2だ。
なぜ、ポケトーク S2か?
それは、「音声を自動認識して翻訳してくれる」という機能が一番惹かれたからだ。
ポケトーク S2はあらかじめ選んだ2つの言語を設定しておけば、喋るだけで自動で認識してもう片方の言語に翻訳してくれる。
これは筆者的には、「未知のものに対する操作不安の心理的な要因を大きく低減してくれる」ものだというのがすぐに直感で感じ取れた。
言語による切り替え操作を必要としないシンプルな操作が「年配の方でも考えずに簡単に扱える」、「コミュニケーションがよりスムーズになる」というのを想像したのだ。
筆者は、これまでにもWebサービスやアプリなどの開発で主にサービスやアプリのUI UXを考える機会が多かったのだが、「考えさせるな、直感的に」を意識しながら携わってきた。
なので、操作負担による心理的ストレスを減らせるのは非常に重要な事だと感じ取り、これ以外の選択肢を考える事に至らなかった。
高齢者でも手軽に使える
実際に年配の方にも使って貰った。日本語と英会話でのやり取りだ。
今まではスマホの操作が簡単なのにも関わらず自分から進んで使う感じではなかったのだが、ポケトーク操作が単純なためか自ら進んで使うという光景を目の当たりにした。
そして二者間のやり取りがスムーズ。
一方が喋って端末を机の上に置く。そしたら、もう一方の人がその端末を手にして同じように使う。
やはり、「スマホのアプリを開いて操作して話して翻訳して」よりも、ポケトークの端末のボタンを押しながら話しかけるだけ、専門機による心理的障害が低減されたのは間違いない。
小型スマホを彷彿させるポケトーク S2のデザイン
初見での見た目は、小型スマホを彷彿させるデザインとなっていて、背面は丸みを帯びている。
丸みを帯びているので多少の持ちやすさはあるものの、小さいので少々落としやすい感はあるので落とさないように気をつけたい。
専用のシールや保護ケース、ストラップも用意されているので、保険という意味では揃えておきたい。
文字のサイズは見やすいが画面サイズはそれなり
ポケトーク S2の画面サイズは2.8インチ、筆者が所持しているiPhone SE2の画面サイズは4.7インチでiPhone SE2の大きさはポケトーク S2の約1.68倍の大きさになる。
ポケトーク S2は、端末表面のボタンを押しながら話しかけると、話しかけた言語を自動で認識して設定した言語に翻訳してくれるのだが、その際に声での通訳と話しかけた言語と翻訳した言語の文字も表示してくれる。
音声と文字の両方で翻訳を確認できるわけだが、端末の画面サイズはiPhone SE2よりも小さいものの、iPhone SE2でYahoo! Japanのサイトを開いて文字の大きさを見比べたが、ポケトーク S2の方が文字はやや大きく表示されているので、それなりに見やすい。
設定で、「最小、小、標準、大、最大」の5段階で設定できる。最大にすると文字が大きくなるが、1行で表示できる単語の数が減る。
これはトレードオフの関係になるので、対策としては画面サイズがもう少し大きいポケトーク S2 Plusを利用する必要がある。ポケトーク S2 Plusの画面サイズは3.97インチ(800×480ピクセル)となっている。
最大約30秒の会話も翻訳してくれる
画面サイズが小さいのと文字の大きさがやや大きいので長文翻訳にはやや不向きだろうと、思っていたが、意外にも少々の長文も翻訳してくれる。
iPhoneのGoogle翻訳のアプリで、喋って少々の長文を翻訳してもらおうと思ったら、長文にも至らない部分で勝手に翻訳が開始された。(記事執筆時点)
コミュニケーションにおいては可能ならテンポよく会話したいのだが、その場合には会話の途中で止めたくない場合もあるだろう。
そういう意味では、ちょっとしたイチオシのポイントと言えるかもしれない。
ちなみに、翻訳によって表示された長文は画面外にはみ出るが、スクロールが可能なので閲覧は可能となっている。
また、会話の長さは最大30秒としている。
翻訳履歴を保存できる
説明書を読まずに利用した筆者だったが、翻訳結果のテキストの保存機能が欲しいと色々と触っていたら保存できることが分かり、嬉しくなった。
せっかく翻訳してもらったので、いいと思った翻訳があれば見返して自分にものにしたいと考えることもあるだろう。
そういう意味では、翻訳を保存できるのは嬉しい。翻訳履歴は、お気に入り登録もできる。また、翻訳履歴はオフラインでも利用できるようになっていて、タップすれば音声で喋ってくれる。
ちなみに、10,000件の履歴を端末上で参照・再⽣できるとしている。
シンプルな使いごこち
冒頭でも解説したが、年輩の方でも簡単操作で翻訳が利用きる内容になっている。
ただ、やはり知識がないとWi-Fiに接続したり、設定もままならないのは、年齢的な要素に加えた好奇心などの個人的な問題になるのは言うまでもない。というのも、筆者が同い年の年輩の方を見て感じたからである。
スマホを普段から利用しているのであれば、それほど迷う操作はそんなにないほどにシンプルなのは間違いない。
生活圏や会話内容における翻訳の問題
生活圏における翻訳の問題
ふと、翻訳機を使って思ったのは、国間の文化や慣習などの生活圏における違いによる理解がないと翻訳できても通じない会話があるという事だ。
例えば、会話を見ていると、アメリカでは単位はインチ、温度は華氏を使ってるから、それらがそのまま訳されるから分からなかったりする。当たり前と言えば当たり前だ。
なので、その理解が必要だったりする。
分からない言語は分からない
また、英語なら多少分かる場合でも、他の外国語だとまったくもってその翻訳が合っているのか、まったくもって分からない。
例えば、スワヒリ語が翻訳できたとしても、意図した内容で翻訳できているのか分からない、ということである。
まとまっていない会話は翻訳しづらい
同様にまとまっていない会話はやはり翻訳がしづらい。
「えーと、あのね、だから、あれは、いや、でも」
こんな会話は翻訳されてもまったくもって分からない。
そこら辺の無駄な会話をAIが削ぎ通して、まとめてくれればいいのだが、まだそうもいかないので、ある程度、筋の通った会話になるように心がけたい。そうしないと翻訳しづらい内容になる。
Wi-Fiがあれば継続して使える
購入当初は、SIM入なので外でも電波さえあれば使えるのだが、実際にはWi-Fiやスマホのテザリングがあれば使えるので、SIM契約の期間が過ぎてもそのまま使えるということになる。
ちなみに、海外はeSIMがおすすめだ。対応端末であれば物理SIMの契約が必要ないので、スマホでeSIMを契約して、それでテザリングすれば使えるかと。
- アメリカでのeSIMの使い方。iPhoneでの設定方法
- Nomad eSIMの使い方。ベトナムでiPhoneでアクティベートできない場合の対処法も
- Grabの使い方。ベトナムのタクシー、配車サービスの利用方法
- iPhoneでeSIM対応機種かどうかを確認する方法
- AndroidでeSIM対応機種かどうかの確認方法
会話レッスンはオマケ
英語、および中国語の会話レッスンの機能もついているが、シンプルな内容になっている。
軽く試した限りではオマケ的な内容となっているので、本格的に英会話レッスンをしたいという場合には向かない。
会話レッスンは、下記のシチュエーション別に分かれていて、さらにアクセスすると、細かい内容を選択できる。
- 空港・機内
- ホテル
- 移動
- レストラン
- 観光
- ショッピング
ただ、会話のレッスンは簡素なもので、下記のようなやり取りが数回繰り返されるだけだ。(ちなみに、筆者の発音が悪いのか、なかなかに読み取ってくれなかった)
- シチュエーションによる質問をされる
- 答える
- それに対する反応が少しある
よりディープにし英会話レッスンをしたいなら、最近ではChatGPTのようなAIチャットを使った方がいいだろう。
ソフトウェアの更新機能で安心感
近年の端末は、インターネットに接続できる端末が一般的になりつつあり、このポケトーク S2もインターネット経由で利用ができるようになっている。
そのため、ソフトウェアによるアップデート可能なので、機能改善や不具合があった場合にも安心して使える。
電波のないところではただのガラクタ
ポケトーク S2の翻訳機能は、基本的にインターネット接続が必須となっている。
居酒屋で実際に使う機会があったが、居酒屋の場所が悪かったのか電波が非常に入りづらい場所にあり、なかなか翻訳できない場面に遭遇した。
この場合には、本当にただのガラクタになってしまう。
翻訳履歴はオフラインで使えるものの、電波の良い場所、あるいはWi-Fiの入る場所じゃないと使い物にならないので注意が必要だ。
その他
その他には、ポケトーク S2はBluetooth 4.2が備わっており、Bluetooth 4.2の対応のスピーカーであれば、接続してスピーカーに流すこともできる。
家にあるBluetoothスピーカーに接続してみたが、簡単に接続でき、ポケトーク S2から音声ボリュームの調整もできた。イベントなどで使えそうだが、インターネット接続環境が安定している場所が必要となる。
ポケトーク S2とPlusとの比較
参考にポケトーク S2とPlusのスペックを表にまとめて比較してみた。Plusの方が大きい分、画面サイズやバッテリー容量、重さがの数値がやはり少し大きくなっている。
項目名 | ポケトーク S2 (スタンダード、ビジネス共通) | ポケトーク S2 Plus (スタンダード、ビジネス共通) |
---|---|---|
双方向に自動通訳 (本機能をONにした場合) | ○ | |
対応国/地域 | 170以上 | |
カメラ翻訳 対応言語 | 56 言語 | |
通訳 対応言語 | 音声・テキスト 74 言語、 テキストのみ 11 言語 対応言語一覧|POCKETALK(ポケトーク) | |
AI会話レッスン | ○ | |
サイズ | 91.6 x 53.8 x 11.5 mm | 123 x 65 x 11 mm |
重量 | 75 g | 125 g |
画面サイズ | 2.8 inch | 3.97 inch |
画面解像度 | 640 x 480 px | 800 x 480 px |
バッテリー | リチウムイオン バッテリー | |
バッテリー容量 | 1200mAh | 1550mAh |
充電時間 | 75分 | 130分 |
連続待受時間 | 179時間(7.5日) | 213時間(8.9日) |
ワット時定格量 | 4.56 wh | 5.89 wh |
バッテリー充電 | USB Type-C 入力電圧:5Vまで 入力電流:2Aまで | |
Bluetooth | 4.2 | |
SIM カードスロット | nano SIM | |
データ通信方式、 対応周波数帯 | 3G [W-CDMA] 1/2/5/6/19 4G [FDD-LTE] 1/2/3/5/7/8/18/19/20/26/28B [TD-LTE] 38/39/40 | |
Wi-Fi | IEEE802.11a/b/g/n 2.4GHz : 1~11ch 5GHz: 5.2GHz(W52)、5.3GHz(W53)、5.6GHz(W56) | |
スピーカー | x 2 | x 1 |
マイク | ノイズキャンセリング機能 搭載デュアルマイク |
改善して欲しい点
ざっと使ってみて全体的に完成度が高く使いやすいのでそこまでの改善点はないかもしれないと感じたが、あえてあげるとしたら、下記の点だ。
- 翻訳結果のテキストを保存して、それをアプリに転送できる
- 端末のボタンを押したら、ホーム画面に移動してほしい
- 一回でどれぐらいの長さ話せるかを分かるようになると良い
1. 翻訳結果のテキストを保存して、それをアプリに転送できる
1番目の要望は、アプリとの連携ができればさらに便利さは増しそうな感はある。ただ、あまり機能を盛りすぎても、複雑になりすぎて逆に分かりづらくなる可能性もある。
2. 端末のボタンを押したら、ホーム画面に移動してほしい
2番目の要望は、設定画面などで操作が終わって端末の物理ボタンを押したら、ホーム画面に移動したいということだ。
残念ながら端末の物理ボタンをタップしても何も反応がなく、ただたんに会話時に押すためだけに存在する物理のボタンとなっている。スマホと似たようなデザインなので、ユーザー心理的には押したらホーム画面に戻るとイメージをしてしまう。
3. 一回でどれぐらいの長さ話せるかを分かるようになると良い
3番目の要望は、どれぐらいの長さまで話せるかが視覚的に分かるようになるとさらに良いと感じた。
筆者はスマホ感覚だったので短い時間しか話せないのかと思ったが、調べてやっと30秒ほど利用できると知ったからだ。これが視覚的に分かると良い。
ポケトーク S2のレビューまとめ
これまでに数百のアプリを触ったり、Webサービス、アプリのUI UX開発に携わってきた筆者だが、このスマホトークの完成度は有益で高い商品だと感じた。
テクノロジーの進化により益々便利な世の中になっているが、言葉による言語の壁は失われつつあると感じる。
ポケトーク S2がおすすめな人
- 手軽に翻訳機能を使いたい
- 飲食店やお店などのインバウンド需要がある
- 様々な国の人と接する機会があるが、もっと気軽に翻訳機能を使いたい
- スマホを使うことによる心理的抵抗感をなくして翻訳機能を使いたい
- 海外旅行で気軽に翻訳機能を使ってコミュニケーションしたい
