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脳が認識する視覚的錯覚

学術・エンターテイメント・デザインなど様々な分野の人がプレゼンテーションを行なうTEDは人気があるカンファレンスだが、その中のプレゼンテーションで人気があるもののひとつに「ダン・アリエリー:我々は本当に自分で決めているのか?」というのがある。

予想どおりに不合理」の著者ダン・アリエリーは経済行動学者であるが、彼は視覚的錯覚や研究結果を用いて、人間は自分の意志で何かを決断する際、思っているほど人間は合理的ではないことを証明している。

例えば、いくつかの国で臓器提供の関心について下記のようにアンケートを取ってみる。

●臓器提供者プログラムに参加したい場合、チェックボックスに印を入れる

この結果、皆チェックを入れず参加しない。

また、別のいくつかの国で下記のようにアンケートを取ってみる。

●臓器提供者プログラムに参加したくない場合、チェックボックスに印を入れる

この結果どうなったかというと、こちらも皆チェックを入れない。

この例が示すのは、人間は自分たちが意思決定をしているかのようだが、実はその意思決定をさせているのは、そのアンケートの「設計」に委ねられている部分があるということだ。

同じ臓器提供プログラムの質問であるが、質問の切り口が違うだけでその結果が異なってくるのは確かに不合理だと言わざるを得ない。

さらに興味がある人は、こちらを。

クリエイティブにおける視覚的錯覚

人間は視覚的錯覚を受け入れやすい生き物で、視覚的錯覚に関して言えばクリエイティブにおける製作物も、その働きが及ぼす影響は様々な場面であるだろう。

そして、上記のリンク先の映像の中でも紹介されているが、下記の視覚的錯覚の具体例がある。
下記のテーブルで、面が長いのはどちらだろうか。
クリエイティブにおける視覚的錯覚 01

答えは同じだ。
右側のテーブル面は、左側のテーブル面を回転させているだけだ。

人間の脳は目に映る世界を3次元的に解釈しようとする傾向が強い。
そのため、無意識のうちに視覚情報の中に奥行きを推定するための手がかりを見つけ出し、そこから3次元的な世界を構築している。
ところが、私たちは、この構築過程そのものを意識することができない。

と、説明があるのは、こちらのマインド・ラボというサイトだ。
http://jvsc.jst.go.jp/find/mindlab/
(Flashのため、スマートフォンでは見れない)

マインド・ラボは、独立行政法人科学技術振興機構が運営管理するサイトの一つで、視覚情報が脳にどのような影響を及ぼすかを紹介しているサイトだ。

もう一つ紹介してみよう。
下記の図の真ん中にグレーがあるのだが、左のグレーの方が明るく見えるのではないだろうか。
クリエイティブにおける視覚的錯覚 02

しかし、これは2つとも同じ明るさのグレーになっている。

脳は「明るい領域」と「暗い領域」が接しているとき、その違いを強調しようとする。
そのため、周囲が暗い方がより明るく、周囲が明るい方はより暗く見える。
つまりは「明るさ」は、脳がその周囲の状況との関係の中で作り出している。

このようにマインド・ラボでは、下記の4つのセクションから映像を交えながら脳が視覚情報をどのように処理しているのかを紹介している。
・連続した世界という幻影
・2次元から構築される3次元
・視覚は物理的世界を解釈する
・感覚の存在しない知覚

視覚的錯覚を知ることでクリエイティブの幅を広げることができるのではないだろうか。

しかし、視覚から入ってくる情報は、無意識的に脳が変換や補完することにより様々な情報が脳に伝わるのだが、時にはそれが錯覚を起こしているのにも関わらず、それを認識できないまま何かしらの決断をさせることもある。

しかも、その錯覚を認識することは難しい。

デザインは「設計」という意味を持つが、そういう意味で言うと「錯覚」を用いた「設計」がなされたクリエイティブは奥深くもあり、時には悪意に満ちることもあるわけだと感じる。

参照
http://jvsc.jst.go.jp/find/mindlab/