大昔に組み立てた自作デスクトップPCのスペックがWindows 11に適合していないためアップグレードできなかったのでどうしようかと思ったが、最近のノートパソコンでも画像編集やら動画編集ができるほどの高スペックになってきたのと、デスクトップPCがわりと場所を取るので買い替えるという意味でそれなりのスペックのノートPCをチョイスしてみた。
そして、たどり着いたのがMicrosoftのSurface Laptop Studioだ。今回は、MacBook Pro 14インチ2021年モデルとやや比較しながらレビューしてみようと思う。
Surface Laptop Studioのスペックと選択理由
今回購入したのは下記のスペックのSurface Laptop Studioだ。
Surface Laptop Studioのレビュースペック | |
---|---|
CPU | 第11世代 Intel® Core™ i7-11370H @ 3.30GHz |
GPU | NVIDIA® GeForce RTX™ 3050 Ti 4GB GDDR6 GPU メモリ |
RAM | 32.0 GB |
ストレージ | 1.0 TB |
解像度 | 2400 x 1600 (201 PPI) |
重量 | 約1.8kg |
アクセサリー | Surfaceペン |
バッテリー | 最大約18時間 |
今回比較検証したMacBook Proのスペック。
MacBook Pro 14インチ2021モデルのスペック | |
---|---|
CPU | Apple M1 Max 10コアCPU |
GPU | Apple M1 Max 32コアGPU、16コアNeural Engine搭載 |
RAM | 32.0 GBユニファイドメモリ |
ストレージ | 1.0 TB |
解像度 | 3024 x 1964 |
重量 | 約1.6kg |
バッテリー | 最大約17時間 |
なぜ、このSurface Laptop Studioを選択したのかというと、以下の点があった。
- グラボがそれなりのスペックで画像編集や動画編集ができそう
- 見た目のデザインが良さそう
- Surfaceスリムペンがどんな感じかを知りたい
- ノートPCでのクラムシェル、あるいはフリップ機構の感触を知りたい
- タッチパネルの使い心地を知りたい
Surface Laptop Studioレビュー
温風がやや気になる排気口の配置位置
最初に感じたのは、Surface Laptop Studioの本体両サイドにある熱の排気口だ。特に右側の熱の排気口は、ソフトウェアで重たい処理を実行していると温風が排出され、それが右手に当たるのが気になる。
タッチパネル上に手を置けば、さほど感じなかったりもするが特に右手にマウスを置きながら作業していると温風が気になってしまう。
下記はSurface Laptop Studioの背面写真で、本体のサイドに排気口があるのが分かる。
キーボードで文章を打ち込むだけならまだしも、Photoshopでの細かい作業となるとやはりマウスの方が使い心地が良く、タッチパネルよりも疲れない。そうなるとこの温風は気になってしまうのだ。できるなら、排気口は本体の後ろ側に配置して欲しかった。
また、筆者はMacbook Pro 14インチ2021年のモデルも使用しているが、重い処理をしても静音でしかも熱をほとんど感じないMacbook Pro 14インチの能力は優秀だと感じ得ない。
この記事を最初に書いている時期は1月下旬の寒い冬真っ只中であるが、夏場にこの温風を受けるとさらに熱く感じそうだ。ただ、ブログを書くという作業や簡単なPhotoshopでの作業ならば、そこまで唸って温風を出すということはない。
外部ディスプレイはUSB-C出力対応が必須
AdobeのPhotoshopやLightroomなどの画像編集、レタッチソフトや動画編集ソフトDaVinci Resolveを使う前提での利用が念頭にあったので、Surface Laptop Studio本体のモニターではなく外部ディスプレイをメインで使うことを考えていた。
そして、このSurface Laptop Studioのモニター出力はUSB-C出力できるディスプレイが必須になると言っても過言ではない。
というのも、HDMI出力が付いていないし、USB 4.0/Thunderbolt™ 4のUSB-Cポートが2つしか付いていないからだ。
なので、外部ディスプレイを使用するなら、以前に紹介したDellのディスプレイU2723QEやU2723QXのように、USB-Cのケーブル一本をつなげるだけでディスプレイに画面を映し出したり、電源の供給もでき、さらにはLANケーベルでインターネットに高速アクセスできるディスプレイの利用をお薦めする。
さらに言えばUSB-Cポートが左側に2つしかないため、やはり上記のような条件を満たすUSB-C対応ディスプレイを利用することで、大体は事が足りて机の上のケーブルが下記の写真のようにスッキリするかと。
参考までに筆者が使用している外部ディスプレイは下記のDellモニターだ。これまでに色々なモニターを使ってきたが非常に満足している。
参照 Dell U2723QEのレビュー。U2723QXとの違いは?IPS Blackの4K27インチモニター
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ちなみに、MacBook Pro 14インチにはHDMIポートが付いているが、家でも事務所でもUSB-Cでのモニター出力をしているため、筆者にとっていまのところHDMIを利用する機会がないので、不要なものとなっている。
SDカードスロットが欲しい
Surface Laptop Studioのスペック的には、クリエイターもターゲットな仕様となっているだろうが、それであるならばSDカードスロットも欲しいというのが使っていて感じた。
AdobeのPhotoshopやLightroomで画像編集・レタッチや最近では動画編集も流行ったりしているので、一眼レフカメラなどで撮影した写真のレタッチや動画の編集をしたいというクリエイターの人もいるだろうが、そういうクリエイター向けにSDカードが用意されていないのは少し残念な気がしてならない。
MacBook Pro 14インチにはSDカードスロットが付いていて手軽に使えるので重宝している。
右側にもUSB-Cポートが欲しい
同様にUSB-Cポートが本体の左側に2つしかないのだが、気持ち的にはやはり右側にもう一つ欲しいところだ。なんとかやりくりすれば2つでも事が足りるが、やはり抜いたり挿したりする作業が煩わしいと感じたりすることもある。
また左側にUSB-Cポートが2つしかないため、例えば外部PCモニターと接続する場合やマウスの有線接続をしたい場合は、コードの長さによっては片方にしかコードが挿せれない不便さを感じた。
ただ、先程も述べたようなDellモニターのような外部モニターでUSBポートが付属しているモニターを選択することで、この問題は解消できるので外部モニターも検討をおすすめ。
MacBook Pro 14インチにはUSB-Cポート3つが付いていて、やはり程よい。
ノートPCの顔認証の使い勝手がイマイチ
ノートPCの不使用時は画面をセキュリティロックをしてすぐにパスワードをすぐに求めるように設定してて、毎回パスワードを打つのは面倒なので顔認証を利用しているが、この顔認証の使い勝手がイマイチだ。
ノートPCで顔認証を使うのは初めてで便利だと思った反面、使っていて少しイマイチな使い勝手だと感じた。
というのは、例えば外部モニターを利用している場合、顔認証をするためにわざわざ真正面に向いていた顔をSurface Laptop Studioの画面に顔を向けないと認証できないというのがある。
また、iPhoneではマスクしてても認証できるのだが、マスクをしていると微妙に認証されなかったりする。なので、ノートPCにおける生体認証は顔認証ではなく指紋認証の方が適切だと感じた。
これはSurface Laptop Studioだけの話に限らず、顔認証を採用しているノートPC全般に言えるだろう。
そして、MacBook Pro 14インチでは指紋認証が採用されているが、やはり指紋認証の方が使い勝手が良い。
アプリの起動速度
Photoshop、Lightroom、Davinci Resoleve Studioの3つのアプリを使って起動速度をスマホのストップウォッチでざっくり計測してみた。
参考値としてMacBook Pro 14インチでも同じアプリを使って比べてみたが、冒頭のMacBook Pro 14インチのスペック記載の通り、MacBook Proはそれなりの高スペック仕様となっていて、正確に比べることはできないので参考程度にして貰えれば。
アプリの起動速度比較 | ||
---|---|---|
Surface Laptop Studio | MacBook Pro 14インチ 2021 | |
Photoshop | 約11秒 | 約6秒 |
Lightroom | 約10秒 | 約6秒 |
Davinci Resolve Studio | 約10秒 | 約6秒 |
SSDの速度比較
SSDの速度もBlackmagic DesignのDisk Speed Testのアプリを使って速度を比較してみた。
まずは、MacBook Proの速度。
MacBook Pro 14インチのSSDの速度 | |
---|---|
書込速度 | 読込速度 |
3463.5 MB/s | 5102.3 MB/s |
続いては同様にWindows版のBlackmagic DesignのDisk Speed TestのアプリでSurface Laptop StudioのSSDの速度を測定してみた。
Surface Laptop StudioのSSDの速度 | |
---|---|
書込速度 | 読込速度 |
2239.7 MB/s | 2273.8 MB/s |
SSDの速度比較をまとめたのが下記の表だ。明らかにMacBook Proの方が速いのが分かる。
Surface Laptop StudioのSSDの速度 | ||
---|---|---|
書込速度 | 読込速度 | |
MacBook Pro | 3463.5 MB/s | 5102.3 MB/s |
Surface Laptop Studio | 2239.7 MB/s | 2273.8 MB/s |
高画質動画編集は厳しい
Surface Laptop Studioで動画編集をしてみたいと思う人もいるだろうけど、最近では4K動画が当たり前になってきているのだが、果たして編集は可能だろうか?
結論から言って、高画質動画編集は厳しい。
動画編集ソフトDavinci Resolve 18 Studioで試しに動画編集をやってみたが、CanonのEOS R5のC-RAW Lightの8K動画での再生は無理なことはもちろん、4K動画のALL-I圧縮方式での動画もまともにできず、「The GPU failed to perform image processing because of an error.」とGPUが処理できないとアラートが出てくる。
いずれも動画のファイル容量がギガ単位なのでさすがにこれは厳しいので、4Kの動画ファイルを軽くするためにProxyファイルに変換して再生時の解像度を下げてみたりしたが、プレビューや音楽再生でカクついたりして、筆者の中では高画質動画編集するには厳しいというのが結論だ。
ただし、4K 60P IPBで撮影した動画やiPhone 12 Proで撮影した4K 60Pの動画は問題なく編集できた。表にまとめると下記の通りで、YouTube程度のクオリティを求めない動画、CMや映画のようなクオリティを求めない動画編集なら可能と言ったところだ。
8K C-RAW Light | 厳しい |
---|---|
ALL-I | 厳しい |
4K 60P IPB | 可 |
iPhone 12 Pro 4K 60P | 可 |
下記は、Surface Laptop StudioでDavinci Resolve 18 Studioで動画編集をしているところ。
ちなみに、MacBook Pro 14インチは、カラーグレーディングを適用した状態でC-RAWの8K動画の再生解像度を落としたり、4K動画のAll-I圧縮方式での場合でもプレビュー再生は可能だ。
筆者はパソコンでゲームはしないが、上記の事からSurface Laptop Studioでスペックを必要とするようなゲームは厳しいのではないかと考えられる。
画像編集やレタッチは可
上述したように、高画質動画編集は厳しいものの、PhotoshopやLightroomなどの画像編集やレタッチをするなら、十分なスペックとなっている。
PhotoshopでWebページのデザインや、LightroomでRAWデータの写真をレタッチしてみたが、問題なく操作ができた。
意図せずにクラムシェルが動くこともある
Surface Laptop Studio本体のカバーを開こうとして持ち上げる時に、不意にクラムシェルモードになってしまうことがある。
カバー自体は強力なマグネットでくっついている状態なので、力の加減と持ち上げ方によっては意図せずに簡単にクラムシェルモードになってしまうのだ。
なので、カバーの開閉はやや気を使う必要がある。
クラムシェルとSurfaceスリムペンの相性は良い
使用していて良かったのは、クラムシェルとSurfaceスリムペンの相性だ。
クラムシェルモード時のカバーモニターは、平になるまでわりと好きな角度まで押し倒すことができるため、カバーモニターが垂直状態での利用がしづらい場合にはスリムペンが利用しやすい角度まで調整ができる。
下記写真の角度まで曲げるとわりと書きやすかったりする。スリムペンの使い心地は、可もなく不可もないといったところだ。
クラムシェルモードでのカバーを下記のように平に角度を変更しても、ちゃんとモニターに映し出されるのにはちょっと感動がある。
クラムシェルモードにした場合、リアルのキーボードが隠れるが文字入力に関しては下記写真のように仮想キーボードが表示されて文字が打てるようになっており、スマホやタブレット端末と同じような感覚で使用できる。
ちなみに、Surfaceスリムペンは下記写真のように背面の隅にマグネットでしまえることができ、これは結構便利だ。
なお、Surfaceスリムペンは、会議での利用機会があるなど使う目的が明確ではない場合、そこまでは必要ないだろう。
少し重いがデザインは良い
約1.8Kgと重量があるので、手さげかばんで持ち運ぶのは少々疲れるかもしれない。筆者の場合は、リュックでの持ち運びのためそこまでの重さは感じない。MacBook Pro 14インチは約1.6kgで多少軽いもののやはり手さげかばんで持つには少々重い。
全体的にはシンプルでシルバー基調のデザインはスタイリッシュさを感じさせる。クラムシェルも良く出来ており、ノートPCだけどもタブレット端末のようにも利用でき、背面の凹みのあるデザイン設計はSurfaceスリムペンの収納も良い仕上がりになっている。
シンプルなWindowsのロゴがスタイリッシュさを感じさせる。
タッチパネルはWindows 11との相性が良い
Windows 11では新しいUIデザインが採用され、タブフォルダーや画面整列などはタッチパネルを使っていて便利だなと感じた。
そういう意味ではWindows 11との相性はいいだろう。
下記の画面は、フォルダーを画面上部に少しドラッグすると表示される整列機能。タッチパネルではこれが便利。
日本語変換のキーボードのキー配列がちょっといい
下記の写真はSurface Laptop Studioのキーボードの写真だが、よくある日本語キーボードの日本語変換の切り替えキーは左上にある「半角/全角」キーが一般的だが、この配列はMacの日本語キーボードと同じ配列になっている。
スペースキーの左隣の「A」を押すと英数字の入力、スペースキーの右隣「あ」を押すと日本語入力になる。
「半角/全角」だと、現状が日本語入力なのか英語入力なのかが分からないこともあるが、このキー配列だと日本語入力、または英語入力のどちらかを確実に意図して押せるのだ。
Surface Laptop Studioレビューまとめ
第12世代のCPUとGPUのメモリがもっと欲しい
先述したように、動画編集においては残念ながらパワー不足と言わざるを得ない。
記事執筆時点ではインテルのCPUは第12世代が最新でより速くなっているし、Surface Laptop Studio 2が出るのなら第12世代のCPUが組み込まれるだろう。
また、今回の「NVIDIA® GeForce RTX™ 3050 Ti 4GB GDDR6 GPU メモリ」は、動画編集においてはパワー不足を感じたので、より上位のGPUモデルやメモリを搭載したモデルも選択できるようにして欲しい。
なので、ノートPCで動画編集をするなら他のメーカーの更に高スペックなノートPCか、MacBook Pro 14インチの新しいモデルが2023年2月3日に発売となっているので、それを狙うか型落ち2021年モデルは狙い目だとも言える。
ただし、先程も述べたように動画編集はしないけど画像編集や写真のレタッチがしたいのなら、特に問題はないだろう。
Surface Laptop Studioがおすすめの人
動画編集においてはパワー不足感を感じたり、SDスロットカードが欲しいなどの部分はあるものの、クラムシェルのデザインやSurfaceスリムペンの収納方法、Windows 11の新しいUIデザインとは相性が良く、MacBook Proよりも使い勝手が良いと感じる部分もある。
個人的にお薦めするのは下記のような人。
- クラムシェルのノートPCを使ってみたい
- Surfaceスリムペンで使用したい用途がある
- ノートPCだが、タブレット端末のように利用したい
- 手持ちではなくリュックでノートPCを持ち運ぶ
- 高画質動画編集はしないが、簡単な4Kの動画を編集したい
- PhotoshopやLightroomで画像編集、写真のレタッチをしたい
- 複数のアプリを起動してもサクサク動くノートPCを使いたい
- USB-Cで電源供給、画面表示、優先LAN接続がUSB-Cケーブル一本でできるモニターを使いたい、あるいは持っている
- タッチパネルでWindows 11の新しいUIデザインをノートPCで利用したい
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